03.11.03

Biennaleーその2ー

 またまたVeneziaに行ってきた。今回は日帰りである。前回寝不足と時間が足りなかったせいで、Giardiniをまともに見ることが出来なかったので、今回はゆっくりGiardiniだけに集中して見ようかと思ったのだ。MilanoからVeneziaまでは約200kmある。長野市から東京よりも少し遠いくらいだ。長野から東京に行くので、新幹線で約1時間30分弱、MilanoからVeneziaまで、こちらで言うところの新幹線に乗って約2時間30分。電車のスピードは比較にならないほど遅いが、何と言っても安い。長野ー東京間が片道8000円位かかるのに対し、Milano-Veneziaは片道3000円ほど、さらにCartaVerdeというユース専用の年間割引カードを使うとさらに元値の15%も安くなる。僕はそれをもっているので毎回使っている。一年に5回くらい国内旅行をする人間であれば、かなり元を取ることが出来るだろう。とにかく交通費がめちゃくちゃ安いのである。だから、長野から東京に出るくらいのお金があれば、MilanoからRomaまで行くことが出来てしまう。イタリアリラの時はもっと安かったのだが。
 しかし、今回もほとんど寝ることが出来なかった。何故だろうか、最近旅行の前の日は、緊張のためか、全く眠れない。眠ったとしても、最高2時間ほどで起きてしまい、その後は全く眠れなくなる。ちなみに今回は早めに寝ておこうと思い、夜10時半にはベッドに入ったのだが、一時間後の11時半には既に起きてしまっていた。目が完璧に覚めてしまっていたので、過去に撮った写真を見たり本を読んだりパソコンを弄ったりして朝までの時間を過ごしていた。というわけで、今回も前回と同じく、いやむしろ、前回よりも寝不足な状態でVeneziaに旅立つことになってしまった。電車の中では一時間ほど浅い眠りにつくことが出来た。なんせ周りのイタリア人は常に大きな声で喋っているので、何度も起こされてしまうのだ。
 
 お昼頃Veneziaに着く。超晴天である。とにかくお腹が空いていたので、安そうなオステリアに入って食事をとる。Sarde in Saor(イワシの南蛮漬け)は欠かせない。本当はこのSardeとパンだけあればお昼などは充分お腹を満たすことが出来るのだが、たとえオステリアと言ってもそれはちょっと許されないオーダーの仕方であるので、イカスミのスパゲッティも食べた。一年ほど前から、適当に選んだ食堂であってもほとんど味を外すことはなくなった。時々感じが悪いところはあるが、味は外さない。雰囲気でその店が美味しいかどうかがわかるようになっているのだろう。基本的に観光客が入りそうなところは避ける。クレジットカードのシールがベタベタとドアに貼ってあるところは避ける。小さくて、綺麗とはいえなくて、使っている食器や椅子なども古いところを選ぶ。看板があまり目立たないところを選ぶ。そして後は値段と相談して決めるのである。もう何度もveneziaには来ているので、Veneziaでの平均的な食事値段(sardeは平均8ユーロ)は頭に入っている。それよりも安いところを見つけた時はかなり嬉しいし、そういうところはあまり観光客が来ないような場所にあるので、料理は荒いが味はかなり旨い場合が多い。家庭料理というのかもしれない。

 食事を終え、早速船に乗ってGiardiniに向かうことにした。前回ほど風も冷たくなくてホッとした。今回は1ヶ所分だけの入場券を買った。Giardiniをじっくり見てきたMilanoの友人から、日本も悪くなかったよと言われていたので見てみることにした。確かに悪くはなかったが、何も伝わってこなかった。今回は前回見なかった国の展示を見る。

P1000445.jpg
 ↑アメリカ。Fred Wilsonという人の、黒人と白人をテーマにした作品。テーマがとてもアメリカらしい。なかなかユーモラスがあって面白い展示であった。作品の中に、黒人の肖像画(よくこちらの美術館などで見る中世の肖像画である)があって、それをみて思ったのだが、よく考えてみると、黒人の肖像画なんていうものはこのかた見たことがない。その肖像画は、顔から下はどこかから持ってきた、元は白人の肖像画で、そこに黒人の顔を当てはめているのである。こうやって当てはめているということは、本当にその時代には黒人の肖像画はなかったのであろうか。

P1000453.jpg
 ↑イスラエル。今回見たパヴィリオンの中で、一番心に残ったものである。テーマは、「これからもルールに従うか、それとも、もうルールには従わないか」。アーティストはMichal Rovnerという人。中は真っ暗闇で、壁に映写機で映像を映しているものが入り口付近にあった。昔遊びでやった電車ごっこみたいに人が縦に連なって歩いている映像だった。面白かったのは、顕微鏡で見た微生物の形のようにその連なった列がうごめいているものが、直径15cmほどの円形のケースの中に見えるものだった。中には染色体の形をしたものなどもあった。そのケースが20ほど、机の上に並んでいる。さらに奥に進むと、5メートル四方の部屋があり、そこでも何十という列が360度、壁をゆっくりと練り歩いているのである。部屋の中には、人間の呻き声のような、心臓に響く音が鳴り響いていた。またまた上手く説明できないのが悔やまれるが、ここの作品は、余計な思いや意見などを全て排除してしまうような、ものすごく強く、妙なパワーがあった。パヴィリオンから出ても、しばらく音と映像が頭の中から離れなかった。
 「遅延と革命」というテーマで、いろいろな国のアーティスト作品が集まる大きなパヴィリオンがGiardiniの真ん中にあったので、そこに行ってみる。

P1000480.jpg
 ↑今回のBiennaleで、さり気なく一番危険人物だと思われるのが、このBerlinde de Bruyckereという人。作る作品が破滅的すぎる。ちょっと貞子チックである。でもこういう作品は嫌いじゃない。

P1000507.jpg
 ↑Peter FischliとDavid Weissという人の合作。壁にニョロニョロとした文章が映し出されては消える。いろいろな国の言葉で書かれた文章で、日本語もあった。文章自体は僕には何も訴えかけてこなかったが。ちょっと深すぎるのかもしれない。視覚的に綺麗な作品だった。

P1000494.jpg
 ↑Damien Hirstという人の、薬作品。横10m、高さ3mほどの、全て鏡で作った薄い棚に、ズラーッと錠剤が並んでいる。カラフルで綺麗だった。バファリンを探したがなかった。

 やはりもう一度来て見て良かった。
 
 Giardini見学を終え、電車の時間まではまだまだあったので、ちょっと散歩でもしようかと、San Marco広場に行ってブラブラしていてふと気付いた。この広場の脇で今回のBiennaleの一つの顔、ペインティングの展示がやっているではないか。村上隆の絵があるところである。しかし、時間はあったのだが、今日買ったチケットは1ヶ所分だったので、さらに8ユーロ払って見るのもばからしい。試しにこのチケットで行ってみて、もし入れないと言われたら諦めれば良いや、と思ってとにかく行ってみた。入り口の女性にとてもさり気なくチケットを見せると、彼女はチケットをよく見ないで中に入れてくれた。この適当さがイタリアである。こういう時、イタリアって良いよなぁ、と思うが、もちろんこの適当さでイライラさせられることの方が断然多い。
 まあとにかく、運が良かったと思って絵を見ようとしたら、そこに立っていた係員の女性が、あと10分で閉めるわよ、部屋は15部屋あるから急ぎなさい、と言ってきた。そいつはまずいと思い、本当に駆け足で最後まで見て入り口に戻ると、3分しか経っていなかった。その3分の間に目に付いたのは、Martin Kippenbergerというなんだか美味しそうな名前の画家の、男と女が互いの性器を弄り合っている、一見木炭画のような作品。そして、Gary Hume、Jenny Saville、Margherita Manzelli、村上隆である。特に、Margherita Manzelliという人の少女の絵には心惹かれた。名前からするとイタリア人だろうか。それにしても何故、ペインティングの展示にLucio Fontanaの切り裂き画があるのか、それも一番最初に。あまった時間、村上隆のルイ・ヴィトン用アニメーションを見ていた。アニメーションって、この20年でものすごく変わったな。
 
 Girdiniのパヴィリオンには、作品の前に、監視役のイタリア人のアルバイトが座っている。その中に、椅子に座って平仮名を書く練習をしているイタリア人の女の子がいた。venezia大学には日本語学科があり、日本語を勉強している人たちが他の町に比べてとても多い。だから、こういう情景をみても不思議ではないのだが、でもやっぱりこっちは嬉しくなる。しばらく彼女の書いている姿を後ろでじっと見ていたのだが、なんだか恥ずかしそうにしていたので、勉強頑張ってね、と言ってそこから離れた。彼女はありがとうと返してくれた。日本に興味がある人の中でも、大学で日本を勉強している人とはとても仲良くなりやすい。それはそうだろう、向こうも日本人の友達が欲しいと思っているのだから。かなり貴重な存在である。

投稿者 tomo : 03.11.03 08:31 | トラックバック
コメント
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?