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04.02.09
祖母の手紙
昨年亡くなった母方の祖母の夢を見た。祖母の夢といっても、祖母本人は出てこなかったのだが、祖母の書いた手紙をぼくが読もうとしている夢だった。しかし、日本語の筆記体みたいな流し書きで書いてあったので、僕にはその内容を読み取ることが出来なかった。
昔、僕がまだSienaに住んでいた時のことだったが、祖母が手紙をくれたことがある。僕に喋りかける時とは違って、丁寧な敬語が使われていて、それに対して違和感を覚えた。当時、既に80歳近くだったと思うのだが、遠くない自分の死を見つめている人間独特の言い回しがあったのを覚えている。それを見て、なんとも言えない感情が沸き起こった。
僕がイタリアに来てから、祖母はどんどん小さくなっていき、昔のような元気もなくなっていった。一時帰国して祖母の家に挨拶に行くと、祖母は玄関まで迎えに出てきてくれたが、奥にある祖母の寝室には、昔はきちんと畳んで押入れに仕舞われていた布団が敷きっぱなしになっており、つい先程までそこで横になっていた形跡があった。そしてその数年後には、玄関のドアを開くとすぐに布団に戻って横になるようになった。さらに数年後の伯父の四十九日があった際、祖母は常にイライラし、ちょっとしたことで癇癪を起こすようになっていた。もちろんそこには、息子が自分よりも先に逝ってしまった事に対するやりきれない思いもあったのだろう。しかし、そんな祖母の姿を初めて目にした僕は、なぜか祖母と目を合わせることが出来なくなり、その日はまともな挨拶もせずに別れてしまった。それが僕と祖母がまともに顔をあわせる最後の機会となった。
その祖母が、僕にくれた唯一の手紙を読んだ時に感じたのと同じものを、今僕は、母が時々送ってくれる丁寧な敬語のメールに感じるのである。
posted tomoyuki : 04.02.09 11:49